The Stylized Beauty.

12 / 8月 / 2014 category.Heavy Metal, Management

ACCEPT である。彼らの新作Blind Rage が8月13日に発売となる。Amazonと対価を伴う親友関係にある私は、フライングゲットしたのだ。
当然のことながら、興奮に満ちた震える手でディスクを取りだし、一聴する。
Blind_Rage
拳に力が入り、それを突き上げる私がいる。
迷い無き快作である。ヴォーカリストを変えて臨んだ最近の3作には、迷い無き男達のぶれることなき世界観が満ちている。

「迷い無き」
私の敬愛するユリウス・カエサルも迷い無き男であった。敬愛するバンド、IRON MAIDEN, DREAM THEATER, JUDAS PRIEST, SLAYER なども実に迷い無き男達である。
メンバーチェンジも経験し、実験的と本人達が称するいわゆるヒット狙いのアルバムも発表した経緯を持つ彼らのことを正確に表現するならば、「迷いを振り払った」人達となるのであろう。

背筋を切り刻むかのような鋼鉄の音楽性が見事に好みにあうことに加えて、私がHeavyMetalに心酔するのは、このようなバンドのアティチュードによるところが大きい。
このHeavyMetalというジャンルは、私にとっては大変幸運なことに、いわゆるコマーシャリズムから比較的遠い世界にある。インターネットラジオは別としても、地上波のTVやラジオに登場することは極めてまれである。従って、番組制作側や番組スポンサーのキャンペーンとして利用されることがほとんど無い。逆説的に捉えれば、よほどの大物でないと、食べて行くのが大変ということだ。日本を代表するバンドともいえるOUTRAGEのヴォーカル橋本氏が別会社でバリバリ働いているのはその好例といえよう。しかし、キャンペーンに利用されることによる収入と音楽性とは次元の違う問題なのでここでは深入りしない。

私は、自らの講演活動の中で、尊敬する経営者としてジョン・ボン・ジョヴィやスティーブ・ハリスなどビッグバンドのリーダーをあげることが多い。彼らは、曲作りという創作活動から、プロモーションの大枠、そしてバンドという組織作りなど極めて多種は仕事をこなす。いわゆる芸術家であるがゆえに、直感的に行っていることも多いのだろうけれども、インタビューを通して学ぶ彼らのスタンスからは、ちょっとしたMBAなどには到底敵わない「理に適った」ビジネスセンスを感じるのである。

「理に敵った」とは何か。
無論、これを一言で表現するのは難しいことであるし、詳しい解説はその道の人に委ねるとして、私なりの見解を示す。「必ず上手く行く」ということだ。「上手く行かないことはやらない」と言い換えても良いかと思う。

バンドも会社も組織である。だからこそ、私たちがやるべきことは極めて類似している。
唯一の違いといえば、バンドは突出した個の組み合わせによるところが大きく、再現が極めて難しいので、事業継承ということをあまり考えなくても良いことであろう。ツェッペリンは解散してもう存在しないからレジェンドなのだ。しかし、その継承をスピリットを対象とするならば、そこに類似性を求めることも可能かと。

「上手く行かない組織」の典型は、「上手く行かないこと」を「一生懸命」行うタイプとして表現出来よう。
「上手く行く組織」の典型は、「上手く行くこと」に「命を賭けて」取り組むタイプとして表現しても言い過ぎではなかろう。

「上手く行くこと」を導き出すには、
「明確かつ具体的な理想」ー「冷徹かつ事実に基づく現実認識」=「解決可能な問題・課題」
という計算式を利用すれば良いのであるが、
「曖昧かつ抽象的な理想」ー「自己都合に基づく現実認識」=「解決しても意味が無い問題・課題」
と混同してしまうのが、自分に甘い私たち人間の儚さなのであろう。

さて、ACCEPTである。
彼らは、80年代に一世風靡し、様々な紆余曲折を経て今日に至る。ウド・ダークシュナイダーという唯一無二の個性を持つヴォーカリストを失ったことによる低迷が、結論としては必要だったということなのだろう。マーク・トーニロを迎えてからの彼らは、そのプロセスを経て、冷徹かつ事実に基づく現実認識を得たと断言出来る。
彼らにしか出来ない男気に満ちたオーセンティックなHeavyMetalが体現されているのだ。切れるリフ、美しいソロ、男気満載のコーラス・・・。

彼らから学ぶ事は、
「冷徹かつ事実に基づく現実認識」すなわち自己認識が、自らが切り開く未来を明るくしたであろうということだ。現実認識と理想認識には、密接なリンクがある。よって、どちらかを突き詰めることによって、両者が明るくなるという実に美しいコラボレーションが生まれるのである。

効率から言えば、理想的姿を明らかにして、その次元から現実を評価することの方が有効である。しかし、それには、論理的思考力と自らを客観視する力が必要となる。つまり、ある種特殊な能力が必要になるとも言えるのだ。そして、経営者である以上、私が追求しなくてはならない力である。
ACCEPTが歩んだ道は、20年近くかかったにせよ、その逆を体現したといえるのではなかろうか。苦悩と経験を重ねることによって、自らの進むべき道と自らの持てる力を強烈に自己認識した例として、私は最大級の賛辞を送りたい。経路は問題ではない。たどり着いたという事実が美しいのだ。

その過程こそが、彼らが奏でる「様式美」の世界に見事に重なるのである。

Stay Metal !

 

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